名古屋市千種区にある心療内科・精神科・児童精神科『池下やすらぎクリニック』

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認知症

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認知症とは?

いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまい、働きが悪くなり、物事の記憶や判断する能力、日時、場所、人の顔などの理解する能力が低下し日常生活に支障をきたす状態となります。主な原因として脳の神経が変化したり、消失していく病気や脳の血管がつまったり、やぶれたりする病気があげられます。

病気の種類はアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)などがあります。

治療として特効薬はなく、病気の進行を遅らせるアリセプト、メマリー、レミニールなどがあります。患者さんの人格を尊重しながら、ご本人にあった介護が必要となります。

アルツハイマー型認知症(認知症の約60%)

脳の側頭葉にある海馬が悪くなり、新しいことが記憶できなくなります。進行すると頭頂葉が悪くなり昔の記憶が保たれなくなります。初期症状として数分前のことをすっかり忘れてしまいますが、数年前のことや昔の事はよく覚えています。しかし、病気が、進行すると昔のことも徐々に忘れて家族がなくなったことも忘れて帰りを待ったりします。幼少期に覚えた簡単なことも忘れてしまうことがあります。

症例1
75歳の女性。家族がお風呂にお湯を張ると失禁して汚した自分の下着を持ってきてお風呂の中に投げ入れます。家族は何回もお風呂を洗ってお湯を入れなおすのに大変手間がかかります。本人は、お風呂と洗濯機の区別ができないようで同じことを繰り返しています。たまに一人で外出すると帰ってこられなくなり警察に保護され、家族のものがしっかり観察していてくださいと注意されてしまいます。

脳血管性認知症(認知症の約20%)

脳梗塞、脳血栓や脳出血は病気の起こる場所によって症状が違います。側頭葉に起これば片麻痺になります。後頭葉に起これば視野の半分が見えなくなる同名半盲が起こります。後遺症として認知症になることがあります。この場合はまだら認知症といって、はっきりしている時とそうでない時の差が目立つことがあり、また感情失禁と言って涙もろくなることがあります。

症例1
70歳男性。2年前に脳梗塞を患いました。以前より高血圧のため、降圧剤を飲んでいました。最近、弟を亡くして以来ずっと悲しみに沈んでいます。食欲もなく自室にこもって過ごし楽しみにしていたデイサービスも休みがちになっています。会話は全く普通にでき記憶もはっきりしていることもあります。一方、最近の出来事を忘れてしまったり、日づけがわからなくなったりします。総合病院の精神科を受診したところ、まだら認知症、つまり脳血管性認知症と診断されました。

レビー小体型認知症(認知症の約10~20%)

レビー小体という物質が脳にたまる病気で脳幹部にのみ蓄積するとレビー小体型認知症になります。精神科医の小阪憲司先生が発見したことで有名です。パーキンソン病とよく似た病態であるためパーキンソン症状が出現します。脳の場所として後頭葉が障害されます。後頭葉は視覚を司る場所のため非常にリアルな幻視が出現することが特徴で小さなサイズの人間や怪獣やロボットが見えることがあります。また、夜間や就寝中にも見えて大声をあげることがあります。その他、注意力・視覚等の認知機能障害、認知機能の変動(まだら認知)や自律神経症状などがみられます。

症例1
73歳の女性、一人暮らし。 自宅にいる時、「娘の顔や亡くなったはずの父親が台所のそばに立っている姿が見える。何人もの近所の人や警察の人もいっぱい来て出入りして落ち着かない。夜中、トイレに起きても何人もの人が後をつけてくる。」と訴えます。その幻視以外は記憶力の低下はあまり目立ちません。

前頭側頭型認知症(ピック病)(認知症の数パーセント)

脳の前頭葉から側頭葉にかけて悪くなる認知症は3種類知られており、前頭葉症状のみが進行していくタイプ、全身の麻痺を起こすタイプ、ピック病があります。

前頭葉は知性・理性・羞恥心など自分の欲望を抑える場所であるためこの病気の場合、社会秩序やルールを守らなくなったり、羞恥心がなくなったりします。自動車を運転していて赤信号を無視したり、一方通行を逆走したりして正面衝突などの大事故を起こすのはこのタイプです。

症例1
52歳の男性。夜中に会社に出勤しようとしたり、自己中心的な行動が多くみられるようになっています。車の運転も、荒っぽくなり、信号を無視したり、一方通行の道に侵入しようとしたりすることが多くなっています。困りはてて奥様が医師に相談しにこられました。入浴もせず、不衛生で体がかゆくて体が真っ赤になってもさらにかきむしっています。

若年性認知症とは

65歳未満で発症する認知症です。全国で約38,000人(2009年3月厚労省)、名古屋市では約1,000人(2013年3月)と推計されています。

原因となる病気は、脳が委縮するアルツハイマー型認知症、脳の血管がつまったりする脳血管性認知症、前頭側頭型認知症、アルコールによる認知症、頭部外傷後遺症による認知症などがあります。

若年性認知症は、働き盛りで発病する為、家庭や社会に大きな支障をきたし、本人や家族のみならず社会的にも経済的にも大きな影響を及ぼします。

認知症への対応について

日頃、認知症の世話をされている方は毎日大変な思いをされていることと思います。しかし、彼らは決してわがままで甘えていて問題行動を起こしているわけではありません。認知症は、知的に何とか適応しようとして返って困惑してしまい、認知症症状が出ているものと考えられます。また、認知症は知的障害はあっても感情はよく保たれていることが多いので自尊心が傷つくと、抑うつ的となり、自殺念慮を抱くこともあります。

認知症に対する特効薬がない今日、狭義の治療(cure)よりもケア(care)が重要であると考えられています。24時間見当識訓練といって24時間折りに触れて、老人の動きに合わせて、声をかけながら一緒に行動していく必要があります。同じことを何度も繰り返し言ってくる人、たとえば、食事をしたばかりなのに「食事はまだか」と尋ねてくる人には、「今、食事の用意をしていますから、できましたらすぐにお持ちしますよ」などと、いつも同じ答でよいのです。さらに同じことを何度も言ってきた場合でも同様に返して下さい。「次の食事の時間は何時ですよ」と約束をしてメモをしたり、食べた時間を一緒に確認しながら書き留めておくことも重要です。きちんと納得のいくように根気よく応対することでお年寄りは安心感が得られます。同じ内容の話をしてくることに対しても、いつも新しいことを聞いた時のように相づちをうちながら対応することも大切です。また、自宅に居るにもかかわらず「自分の家に帰る」と外に出て行ったり、「子供の帰りが遅い」と迎えに出ることもあります。
昔、幸せだったころ住んでいた家を自分の家と思って探したり、子供が小さいからと心配することもあります。 つまり、過去と現実を混同し、現在の状況を適切にとらえられなくてお年寄りなりの心の安定を求めている可能性があります。そんな時、無理に引き留めようとするとますます混乱し、興奮してしまいます。「お茶を一杯飲んでからにしませんか」といい、一緒にお茶を飲みながら、そのお年寄りにとって興味のあることを話題にしているといつのまにか出かけようとしていたことを忘れることもあります。
一緒に家を出てしばらく周囲を散歩した後、「家で少し休んで行きませんか」などと声をかけ、お茶と好きなお菓子を勧めることも気分をそらすことにつながります。出かけたい気持ちを尊重し、時間を決めて一緒に散歩する機会をつくることも大切です。

今日、老年人口が増加し、高齢化社会を迎えるに伴い、認知症が増えてきています。今世紀、これまであらゆる分野で知性あることが尊重され、評価されてきました。認知症が増えるなかで知的価値観を見なおしていくとともに豊かな心ある人間としての価値観を養う必要性が問われています。我々自身の人間性が強く問われているような気もします。知性だけに偏らない価値観を作っていく必要があるのではないでしょうか。愛情ある心を持った人の関わりが一番の薬になるものと思われます。認知症は将来の自分達の問題として理解をしていき、人格を尊重しながら老人と一緒に行動していくことが望まれます。

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