名古屋市千種区にある心療内科・精神科・児童精神科『池下やすらぎクリニック』

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心的外傷後ストレス障害(PTSD)

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心的外傷後ストレス障害(PTSD)

心的外傷後ストレス障害とは生命にかかわるような危険で深刻な出来事、事故や事件、あるいは性的暴力などを体験したり、そのような光景を目撃したり、身近な人や親族に起きたことを知ることがトラウマ体験となり様々のストレス症状が生じる障害のことをいいます。DSM-5には暴行(身体への攻撃、強盗、ひったくり、幼児期の身体的虐待)、性的暴力(無理強いされた性交、アルコールや薬物で興奮を高めた性交、虐待的な性的接触、身体接触を伴わない性的虐待、性的目的のための人身売買)、誘拐、人質、テロ攻撃、拷問、戦争への参加、捕虜となること、天災または人災、重大な自動車事故、突然な外傷的医療事故が挙げられています。なお、PTSDを発症した人の半数以上がうつ病、不安障害などを合併しています。

元々、PTSDは戦場を経験した兵士がかかる病気が発端となりPTSDの原因が紹介されました。

一つは長時間にわたり死の恐怖が続く中で精神が不安定になり、ヒステリー症状を引き起こし、心身ともに障害が出るケースです。ベトナム戦争の帰還兵の多くが、精神的ストレスで社会復帰が困難となり問題化されPTSDと命名されて広く使われるようになりました。

二つ目の理由は自分の死への恐怖ではなく、敵兵士や味方兵士、民間人など、他人の死を目撃してPTSDとなるケースです。自身への死の恐怖と他人が死ぬ悲惨な光景を目の当たりにしたり、自分の手で殺した場合は自責の念で葛藤することになります。これらが、PTSDの原因としてよく知られています。

症状は心的外傷的な出来事(トラウマ)を体験する、トラウマに関連する侵入的で苦痛な記憶と再体験、トラウマに関連する刺激の持続的回避、トラウマに関連する認知と気分の陰性の変化、トラウマに関連する覚醒度と反応性の著しい変化の5つの症状に大別されます。

心的外傷的な出来事(トラウマ)
生命にかかわるような危険で深刻な出来事、事故や事件、あるいは性的暴力などを体験したり、そのような光景を目撃したり、身近な人や親族に起きたことを知ることがトラウマ体験となります
侵入的苦痛と再体験
悪夢、解離症状(フラッシュバック)、刺激による心理的苦痛や身体的生理学的反応(腹痛、頭痛、吐き気)が起こります。
刺激の持続的回避
トラウマ体験に関連する記憶、思考、感情やそれらを呼び起こそうとする会話・場所、行動、物や状況を回避しようとします。
認知と気分の陰性の変化
解離性健忘、自分自身や世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予想、自分自身や他者への非難につながるトラウマ体験の原因や結果についての持続的で歪んだ認識、持続的な陰性の感情状態(恐怖、戦慄、怒り、罪悪感、または恥)、重要な活動への関心または参加の著しい減退、他者から孤立しているまたは疎遠になっている感覚、陽性の情動を体験することが持続的にできないこと(幸福や満足、愛情を感じることができないこと)などがあげられます。
覚醒度と反応性の著しい変化
いらだたしさと激しい怒り、無謀または自己破壊的な行動、過度の警戒心、過剰な驚愕反応、集中困難や睡眠障害がみられます。

DSM-5では上記の基準が成人、青年、6歳を超える子供について適用されます。トラウマに関連した侵入的症状が1項目以上、回避症状が1項目以上、認知と気分の陰性の変化から2項目以上、過覚醒と反応性の著しい変化2項目以上が1ヶ月以上持続し、強い苦痛ないし生活上の機能障害を伴うとPTSDと診断されます。

なお、6歳以下の小児の基準が設けられており、自身または養育者に起こったトラウマ体験により、以下の「侵入的症状」が1項目以上、「回避症状または認知の陰性変化」が1項目以上、「覚醒度と反応性の著しい変化」から2項目以上が1ヶ月以上持続し、著しい苦痛、または両親や同胞、仲間、他の養育者との関係や学校活動における機能障害を伴うとPTSDと診断されます。

侵入的症状
フラッシュバック、解離性フラッシュバック(再演される遊びとして表現されることがある)、悪夢(恐ろしい内容がトラウマ体験と関連していることを確認できないことがある)、想起刺激による心理的苦痛・身体的生理的反応。
刺激の持続的回避
トラウマ体験に関連する記憶、思考、感情やそれらを呼び起こす人、会話、場所、対人関係や状況を思い出させるものへの回避。
認知の陰性の変化
陰性の情動状態(恐怖、罪悪感、悲しみ、恥、混乱)の大幅な増加、遊びの抑制を含め、重要な活動への関心または参加の減退、社会的な引きこもり行動、陽性の情動の表出の持続的減少。
覚醒度と反応性の著しい変化
いらだたしさと激しい怒り、過度の警戒心、過剰な驚愕反応、集中困難、睡眠障害が生じます。
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