名古屋市千種区にある心療内科・精神科・児童精神科『池下やすらぎクリニック』

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思春期・青年期のストレス

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思春期妄想症について

思春期妄想症とは、自己の身体の異常によって周りの人に不快感を与えているという思いを確信している状態をいいます。自己視線恐怖、自己臭恐怖、醜形恐怖などがあります。精神的にも身体的にも不安定な思春期、青年期に発症します。学業、対人関係や社会生活において非常に過敏に反応し、傷つきやすい年頃でもあります。症状を抱える経過は長いといわれています。

自己視線恐怖は、「自分の視線がおかしいので周りに嫌悪感を与えている」という考えをもちます。

自己臭恐怖は、「自分の身体から嫌な臭いが放たれているので、周りの人に迷惑をかけている」と確信します。臭いの種類として、腋臭、体臭、汗の臭い、口臭、便臭、尿臭、おならの臭い、精液臭、おりものの臭いなどが挙げられます。

醜形恐怖は、顔、目、鼻、背、格好など、身体の一部の形態にこだわり、「他人に醜く思われている」と訴えます。

これらの症状は「周りの人たちが嫌な仕草や態度をする」「咳払いをする」「臭いをかぐ仕草をされた」「扉や窓をあけられる」「自分のうわさをしている」といった関係的な妄想として訴えられます。また、「周囲の人たちに不快感を与え、嫌がられ、嫌われ、人に避けられている」という被害的な妄想を抱いたり、「周囲に申し訳ないことをしている」と自分を責めたりすることもあります。

一般的には日常生活において積極的に参加しようとする意欲はみられますが、症状を抱えているために消極的になってしまい、孤立し、閉じ込もる傾向がみられます。妄想を受けとめることに戸惑いを感じたり、恥じたり、劣等感や嫌悪感を抱いたりすることも少なくありません。

症状は状況依存的で人の面前で出現したり、増強されることが多いようです。

性格的には、「気が小さく神経質であるが頑張り屋である」「臆病で引っ込み思案であるが強情である」といった両極端の特徴がみられます。

治療的には妄想が強固で、長期にわたることが多いため、患者の悩みをよく理解して受けとめ、治療が継続できるような治療関係を保つことが大切です。治療の中心は精神療法となりますが、薬物療法は補助的な意味で有効です。少量の抗不安薬、抗うつ薬、精神安定剤が使用されます。忍耐強い治療的な関わりが必要とされ、定期的なカウンセリングを受けることが不可欠です。

思春期・青年期のうつ病

うつ病というと40~60歳代に多くみられる病気ですが、10歳代でもうつ状態は比較的よくみられます。単に思春期の成長過程におけるスランプにすぎないと見過ごされることが多いようです。うつ病になると絶望感が大変強く、問題が解決しないと悩み、死ぬ以外に方法がないと考えてしまう人もあります。若い人の自殺が最近増加しており、ここ30年間で自殺の数は3倍にも増えています。

若年者のうつ病では、成人のうつ病でみられるような絶望感、悲哀感、罪責感などの特徴は少なく、仮面うつ病のように身体愁訴や身体症状が前面に出ることがしばしばあります。また、うつ気分を否認、回避し、その代理症状として、攻撃的行動、睡眠と食欲の変化、登校拒否などの行動異常が多くみられます。また、腹をたてたり、失踪したり、非行に走ることによってうつを紛らわそうとする傾向がみられます。

青年期のうつ病の特徴は、拒絶的、感情的な反社会的な行動、アルコールや違法な薬物の使用がみられることがあります。さらに家出願望、理解されていないという感情、認められていないという感情、落ち着きのなさ、不満、攻撃性がよくみられます。また、不機嫌、家族の行事への参加や協力を嫌がること、自室に閉じ込もり社会生活から引きこもることがしばしばあります。また、学業の障害もおこりやすく、外見に注意を払わなくなったり、情緒が不安定で、愛情関係において拒絶されることに過度に敏感となったりするなどの特徴があります。

うつ病であると判断する点は、行動変化が数週間以上続くかどうかが重要です。数週間以上、うつ気分があるとき、学業が低下したとき、非社交的になったとき、以前、喜んでやっていたことに興味を示さなくなったとき、このようなときにはうつ病を疑い、専門家に相談するべきです。

うつ病はしばしば登校拒否に陥ったり、進級、卒業、就職に大きな影響をきたします。また、自殺につながることも少なくありません。家族や学校側の理解や協力が必要と思われます。

治療には薬物療法と精神療法の2つを組み合わせて行われます。

薬物は抗うつ薬や抗不安薬が使用されます。将来の方針を決めなければならないような課題に直面した際に、挫折感を味わったり、悩んだりしたときには、精神療法が必要になります。両親と子供と一緒に専門医を訪ね十分に話し合いをすることが大切です。

思春期・青年期のストレス

思春期から青年期は精神的にも身体的にも急速な成長的変化を遂げる時期です。一般に12歳頃から18歳頃までを思春期といい、18歳から23歳あたりまでを青年期と考えられています。この時期は、第二次成長による身体の変化、性衝動にどう順応するかが課題となってきます。性の成熟に適応し、男性、女性としての性別役割を身につけ異性関係を実現しようと努力します。また、心理的にも不安定となります。急激な身体の発育のため、それを受けとめることに戸惑い、恥じたり、劣等感や嫌悪感を抱いたりすることも少なくありません。両親への依存を代表とする家族中心の関係から、同世代の人間関係、家庭外の人や社会への理想や依存へと対象が変化していきます。異性への感情や欲求もこれまでと異なって、新たな関係の持ち方を学ばなければなりません。

思春期には独立と依存の葛藤から食欲不振症が生じたり、自己の身体へのこだわりから生じる自己視線恐怖症(自分の視線が鋭いので周りに不快感を与えていると思う)、自己臭恐怖症(自分の身体から嫌な臭いが放たれているので、周りの人に迷惑をかけていると思う)、醜形恐怖症(身体の一部の形態にこだわり、他人に嫌われていると思う)が出現します。その他、いじめ、登校拒否、心身症などがよくみられます。

青年期には自我同一性(自分の存在を自覚し、自己を確立していくこと)について模索したり、葛藤し、適応障害が現れたりすることも少なくありません。現実場面から逃避したり、引きこもり、登校拒否や無気力状態を示すことが多くみられます。

自己破滅的な行動として、自殺企図、手首自傷などがみられます。欲求不満の現れとして、薬物乱用(シンナー、覚醒剤、ライター用ガスボンベ)、過食症、家庭内暴力、いじめ、非行(暴力、万引き、暴走族など)などが挙げられます。

思春期、青年期の人たちは、新たな理想や目標をめざして進学や就職の準備をする時期にあります。不安定な身体と心を抱えながら変化が激しく、多様化した価値観の中で、自分を合わせていかなければなりません。この時期には非常なストレスがかかり、感情面、行動面、身体面においていろいろな問題が生じやすくなります。そのような中で抑うつ状態、不登校状態、拒食症、過食症、過敏性大腸症候群、過換気症候群、片頭痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症状など多彩な症状が現れます。

このような問題を解決していく上で、心理治療、行動療法、薬物療法が有効です。その際に患者の不安、葛藤や心理的な苦悩が思春期、青年期の成長段階において、身体症状や行動異常として表現されるというとらえ方をして援助していくことが大切です。


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