今日では多くの人々がストレス社会の中で生活しているために不眠に悩まされることが少なくありません。不眠は心療内科・神経科で最も多く訴えられる症状の一つです。不眠にはいろいろなタイプがあり、「入眠障害」か「熟眠障害」、あるいは「途中覚醒」か「早朝覚醒」があります。
「入眠障害」は眠るまでに1時間以上かかる場合をいいます。不眠症で最も多い症状です。「今夜も眠れないのではないか」と心配してしまう人に多いようです。「熟眠障害」は睡眠時間の割には満足感が得られず、睡眠不足を訴えます。悪夢を見ることが多いといわれています。
「途中覚醒」は夜中に何度も目が覚め、その後は朝まで眠れない場合をいいます。このタイプは大きないびきをかく人に多いといわれます。「早朝覚醒」は朝早く目が覚める場合です。眠りも浅く目が覚めた時、何となくゆううつであると感じることがあります。
対処法として、生活リズムの調整、適度な運動、環境の調整、漢方薬、睡眠薬などがあります。
不眠にはいろいろな原因があります。家庭、職場における心配事やストレス、育児、夜ふかし、交代勤務、残業などがあげられます。覚醒作用のある嗜好品としては、コーヒー、紅茶、タバコ、アルコールなどがあり、これらを制限する必要があります。睡眠環境として、寝室の明るさ、騒音、温度、湿度、快適な寝具などに注意することも重要です。
身体的な要因としては、睡眠を妨げるような体の病気、呼吸障害や夜間頻尿、痛み、皮膚のかゆみ、咳などによることがあります。 服用中の薬としてはステロイド剤、気管支拡張剤、エフェドリン(交感神経刺激薬)などの副作用で不眠が起こることもあります。
一時的なストレスや環境の変化による不眠は、そのうちに眠れるようになりますのでほうっておいても心配はありません。眠っていないと思い込んでいるだけで意外と眠っているものです。不眠が原因で死ぬことはまずありません。どうしても眠れない日が続くようであれば、状態に応じていろいろな種類の睡眠薬がありますので早めに専門医に相談して下さい。
睡眠薬は、「副作用があるから」「のみはじめると止められなくなるのでは」といった考えを持っておられる方が少なくありません。現在の睡眠薬の中心となっているベンゾジアゼピン系という睡眠薬は、症状の改善とともに徐々に減量していき中止できるようになります。きめ細かな配慮と指導が必要となってきますので自己判断せず専門医にゆだねることが大切です。アルコールとの併用や睡眠薬の濫用により副作用が出現することが多いようです。また、自分自身の判断で睡眠薬を中断してしまうことにも危険が伴います。
不眠のタイプによってどの睡眠薬を使用するかを検討する必要があります。例えば、早朝覚醒のタイプには中時間あるいは長時間作用型の睡眠薬を用いますが、このタイプは高齢者に多く、肝臓での代謝の機能が低下している可能性が高いため少量から投与を開始するなどの注意が必要となります。服用後、少なくとも30分以内には入床するのが効果的です。不眠のため新たな医師の診察を受けるときには、今まで受けていた薬を見せ、服用方法あるいは副作用についてよく説明を受けた上で処方してもらうことが大切です。
不眠症の患者さんたちは精神科以外にも、内科、耳鼻科、泌尿器科、産婦人科、眼科、整形外科などの一般診療科から睡眠薬の処方を受けることが日常よくあります。しかし、個々の不眠のタイプに見合った薬が出されているとは必ずしも保証されません。不眠のため新たな医師の診察を受けるときには、今まで受けていた薬の適応や副作用あるいは服用方法についてよく説明をしてもらってから処方を受けることが大切です。
「副作用があるから」とか「体に悪い薬である」とか「のみはじめると止められなくなるのでは」といった考えを持っておられる方が少なくありません。アルコールとの併用や睡眠薬の濫用により副作用が出現することが多いようです。また、自分自身の判断で睡眠薬を中断してしまうことにも危険が伴います。しかし、現在の睡眠薬の中心となっているベンゾジアゼピン系という睡眠薬は医師の指示通りにのんでいれば、症状の改善とともに徐々に減量していき中止できるようになります。きめ細かな配慮と指導が必要となってきますので自己判断せず専門医にゆだねることが大切です。
睡眠薬の選択についてはどれでもよいということは決してありません。不眠のタイプによってどの睡眠薬を使用するかを検討する必要があります。たとえば、入眠障害のタイプには超短時間作用型や短時間作用型といった睡眠導入剤が適応となります。熟眠障害や途中覚醒のタイプには短時間作用型か中間型の睡眠導入剤が使用されます。また、早朝覚醒のタイプには短時間作用型あるいは中間型の睡眠導入剤を用いますが、このタイプは高齢者に多く、肝臓での代謝の機能が低下している可能性が高いため成人量の1/2から投与を開始するなどの注意が必要となります。いずれも服用後、少なくとも30分以内には入床するほうが効果的です。
睡眠薬の副作用として翌朝に眠気やふらつきが残ることや、夜中にトイレに起きたときにふらついて転んだりすることがありますので注意が必要です。
不眠症の治療法として睡眠薬以外に、光療法、漢方薬、ビタミンB12、自律訓練法などがあります。しかし、身体的な治療のみならず、精神療法やカウンセリングを受けながら心理的な原因を取り除くよう試みたり、生活習慣の改善や環境調整していくことも大切です。
また、良い睡眠をとるために、日常生活において以下のことについて注意することが必要です。
光療法や自律訓練療法については特殊な知識や技法が必要となりますのでぜひ専門医に相談して下さい。
35歳の男性会社員Aさんはコンピューターソフトを扱う仕事をしています。昨今の企業の事情で人員は減り、自分の仕事量が増え毎日午後10〜11時までの残業が続きます。帰宅し入浴をすませ入床できるのは深夜の1時過ぎです。睡眠時間が少なく、熟睡できず、朝の寝起きも悪く、体がだるく仕事に支障が出てきました。
不眠は心療内科で最も多く訴えられる症状の一つです。また、最近のサラリーマンの4人に1人が軽症うつ病であると言われます。不眠を訴えて医療機関を受診する人の約20~30%は軽いうつ病によるものと思われます。うつ病の中には、不眠が主症状で、その他の精神症状や身体症状が目立たない場合が少なくありません。この場合、単に不眠症と診断されて、うつ状態が見落とされ、悪化し慢性化したり、自殺などに至ることもあります。不眠症の場合には常にうつ病を念頭におくことが必要です。
比較的軽症のうつ病(仮面うつ病)は身体の症状が目立ち、抑うつ気分などが自覚されず、患者自身も身体の病気と考え心療内科以外の一般診療科を訪れることが多いようです。仮面うつ病にみられる身体症状は
などがあげられます。これらの軽度のうつ病の身体症状は比較的速やかに改善すると考えられています。
Aさんの場合も仮面うつ病が疑われます。人の体には体内時計が存在し少なくとも深夜12時までに寝ないと生体リズムが狂い易くなります。残業はなるべくひかえて、自宅で夕食を取り、余裕を持った生活を送るよう心がけて下さい。